中国の西北部に位置する新疆ウイグル自治区。この地域は、中央アジアやロシア、モンゴルなど8カ国と国境を接してます。
まさに民族の交差点、異文化の交流点として、ウイグル族やカザフ族、モンゴル族、漢民族など様々な民族が暮らしています。
その中でも、イスラム教を信仰しているウイグル族が多く生活をしており、そんな彼らの大切な家畜でもあり生活との結びつきも強い動物が羊なのだ。ご馳走として食卓に並ぶことも多く、市場や食堂をのぞけば、解体したばかりの羊がぶら下がっている光景もよく目できます。
ウイグルの食文化は、砂漠の中のオアシスでの農耕と牧畜、およびテュルク(トルコ系)民族の歴史が基盤となっていて地理的に隣接するウズベク人やカザフ人と共通した料理が多い事が特長です。
また食材、調味料、調理法などに回族や漢族からの影響も見ることができますが、中国料理と異なるのは、ウイグルは1060年代にイスラム教を国教として受け入れ、コーランに示された規律に従った食生活となり、ウイグル料理の基本は清真料理(ムスリムの料理)であり、口にすることを許された食材として必ずハラール(ハラル)の食材を用いた料理となります。
これは豆知識ですが、口にすることを禁止されている物を「ハラーム」と呼び、代表的な品としては豚肉または豚肉のエキスなどを使用した食品です。
皆さんも学校で習いご存知の「シルクロード」は東洋と西洋を結び、文化文物の交易路として栄え、ユーラシア大陸一帯に広がる交易の道ですが、そのシルクロードを旅する旅人と共に伝わったのが様々な食材や香辛料と料理法などが伝わりました。そしてウイグルの料理や食材と融合し、発展し、ウイグルの独自料理となった品々もあります。
そのシルクロードの要衝として栄え、多くの旅人で賑わったのが「トルファン盆地」です。
トルファン盆地は古くよりシルクロードを利用する旅人にとっての交通の要所であり、シルクロードの要衝として栄え、現在は観光都市となっています。
ウイグル料理で使うメインは羊の肉です。もちろん鶏も使いますが、羊は彼らにとって大切な家畜でもあり生活との結びつきも強い動物、必然的に羊を使った料理が多くなります。
また砂漠の民でもあったウイグル人は、独自の経験的知識の積み重ねなどから得たウイグル医学という体系を持っていて、これに基づく健康維持をする為に良いと考えて食べる一種の薬膳料理などもあります。生薬を茶に加えて飲んだり、イチジクなどのジャムや各種のナッツを炒って作る粉状の食品を積極的にとり栄養の偏りがないように工夫をし、ヨーグルトや季節の果物をよく食べることで長寿を得ています。
ウイグル料理では小麦粉を使い何でも作ります。ナンと呼ばれるパンのような物もあれば、中華まんに似たマンタと呼ばれるラム肉を生地で包み蒸した料理や、ラグメンと呼ばれるウドンのような麺もあります。
製麺方法で面白いのが、ウイグルの製麺方法は日本のように生地を切って麺に仕上げるのではなく、中国の手延製麺方法にある拉麺(ラー・ミェン)または、抻麺(チェン・ミェン)とも言う麺生地を両手で手伸べして作る製麺方法です。
これは紀元前7000年頃、古代メソポタミアで小麦が栽培され始めシルクロード経由で紀元前1世紀頃、後漢の時代に中国に伝わったとされている事から、逆にウイグルが拉麺製麺法(ラー・ミェン)の発祥かも?と思ってしまう程の共通点があります。
この麺の特長は、そのコシの強さと食感です。平らに伸ばした麺を切って麺に仕上げず、練り上げた小麦をひたすら棒状に伸ばしていく製麺方法なのでグルテンが隅々まで均等に行き渡り、コシの強さと食感を生んでいると考えます。麺の種類は日本で良く見かけるウドンのような丸麺とキシメンのような平らな麺の二種類になります。